小さな子どもの切り返しを大人が受けているのを見ていると、「打ち落としになっていないか?」と思うことがあります。
どうして「打ち落とし」になってしまうのか。
圧倒的に背が高い大人が子どもを見下ろしながら受けていると、元立ちの竹刀は子どもにむかって倒れているような状態になります。すると子どもの右腕はほぼ水平まで振り下ろされることなく、竹刀も前方斜め45°上あたりで受け止められてしまいます。
腕が前方へ十分に伸び切る前に、角度的には上から叩き落されてしまう訳です。
そもそも子どもは大人を見上げて面を打とうとしているのですから、十分に振り下ろすという意識も持っていません。
その弊害は?
間合いを遠めにすれば両腕を伸ばすようにさせることは可能です。でもそうすると、竹刀をどけた時に元立ちの面には届きません。よく「切り返しは竹刀を打つのではなく、左右の面を打つつもりで」と言われますが、子どもにその間合で打たせていたら空振りするのは当然です。
さらに打つ寸前の手の内の伸びやスナップによる冴えが生まれてくるタイミングよりも前に、打ち落とされてしまうことが多いように思います。(上にむかって鋭く打つ子はいますけど、空中を打突しても意味がないと思います。)
これでは、切り返しで鋭い打突は身につかないのではないでしょうか。
元立ちの先生方は腰をかがめて、頭を前に差し出しながら受けていますが、子どもの体勢や腕の状態をみると、竹刀や腕が十分に伸びていることはほとんどありません。「竹刀が立った」状態で打ち終わり、次の打突へ移ってしまうのです。
ただ間合だけでも気をつけてあげると、両腕がしっかり伸びてある程度は鋭く打てるようにもなります。身につくものを考えれば、まだマシかもしれません。
僕はどうやっているのか。
僕が子どもの切り返しを受ける時は、必ず竹刀は自分の方へ倒すように心がけています。面に当たる寸前で受け、竹刀を弾き飛ばすのではなく、体を後ろへさばきながら引き込むようにしてあげるのが良いと思っています。そして間合に気をつけてやると、必ず子どもの竹刀は前へ伸びるような打突になります。
更になるべく相手の目線の高さと自分の目線の高さを合わせるようにがんばります。正直、膝や腰はかなりキツイです。でも、そうしないと子どもの力が伸びていかないように思っています。
同じ背丈の子ども同士でやれば良いのですが、小学生の低学年では間合のとり方など、なかなかうまくいきません。
中学生くらいになると、背の高さではむしろ僕の方が低くなりそうなので、前かがみになることもしませんが、それでも竹刀の角度には気をつけます。
打ち落としのような受け方ができるのは、筋力が発達してくる高校生以上で、それなりの技倆がある子からではないでしょうか。
「切り返しは大事」と言いますが、効果的に成果を出すには色々な注意点があると思います。掛かり手ばかりに気をつけさせるのではなく、元立ちとしていかにして自然に引き出すか、ということにも心を砕いています。(でも、なかなか上手くいかないのですが...。)