試合開始の宣告

審判員の宣告ではいろいろ言われますが、ここでは試合開始の場面について述べてみたいと思います。

早い

選手が相互に立礼をしてから抜刀・蹲踞をすると、すぐに「はじめ」と宣告するケースがあります。

これは試合経験が豊富な選手にとっては、テンポ良く飛び出していける「やりやすい」タイミングです。実際に前進して蹲踞で沈み込み、その反動で立ち上がり、前進してきた勢いそのままで跳び出していきます。このタイミングにうまく当てはめると、開始直後にすごい勢いで跳んで相手を圧倒する打突を出したりします。一方で、両方の選手が心得ていると、一瞬の判断で防御に切り替え(あるいは最初から防御で始め)、開始一秒後には鍔迫り合いということも、よくあります。

タイミングが早いと経験的には、ガチャガチャとした試合になりがちです。

弱い

声量の大小もありますが、何よりも声のインパクトが弱いと、何とも締まらない試合開始になります。
気持ちが入っている選手にボソッとした宣告だと、その気持ちが肩透かしのようになってしまいます。

また選手は待ち構えて集中しているから聞き逃さないでしょうが、周囲は様子から何となく始まったように見えることになります。

短い

開始に限りませんが、発声時間が短いのも感心しません。このタイミングで何か音が鳴れば「はじめ」とわかりますから迷うことはありませんが、審判に余裕がなく、いっぱいいっぱいのように見えてしまいます。実際に肩だけでの浅い息使いだと、こうなってしまうでしょう。

声が「弱い・短い」は、審判への信頼感という意味では、良いことはひとつもありません。

僕はこうしている

僕は試合開始の際は、選手が蹲踞をしてから両者の気持ちの充実ぶりを図ってから、開始を宣告します。

錬度の低い選手の場合は、いつまでもぼ~っとしていますので、そこは選手の様子をみながらになります。少なくとも、一呼吸は待つようにしています。
選手が剣先を揺らしていたり、身体でリズムを取っていたりしたら、必ず静止するまで待ちます。選手がいつまでも気づかなかったり、不審な視線を送ってきたりすることもありますが、その場合は「動きを止めて」など、そのまま端的に注意します。

また短くならないように、一語一語をしっかり発音し最後の「め」は少し伸ばします。短くならないようにとは言え「は~じ~め~」等という必要はありません。

この辺は全日本選手権大会の決勝などを見て、真似をするのも良いでしょう。

ここで主審自身もしっかり気を入れることも大事です。選手の動きにつられてバタバタを試合を始めて、落ち着きがないと正しい判定はできません。

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